☆ Asteryskar ☆

【機械惑星編】

-稲妻の決意-

 それもそのはずなのです……ソラはもはや、わたくしたち——〈惑星フラジール〉だけの母星ではありません。大いなる〈太陽系〉の長であるソラは、これまで滞っていた〔御役目〕を成しに、一刻も早く他惑星へと飛び立たなくてはならず……そのために、貴方はソラとの対話を望めずに……とうとう別れを迎えてしまったこと……

 本当は、仲直りが出来ればと……貴方は〈災厄〉の双子との御役目を成し遂げた後、何度も何度も〔摩天楼(うちゅうせん)〕を昇り、ソラへ会いに行っては追い返されて……それでもただただ直向きにお会いしに行っては止められて……その拒絶を已む無く受け容れたがために、貴方は……

 そう……貴方は、ソラの〈光〉無くては動くことの叶わない〈器〉……わたくしが〈災厄〉を退けるために縫い上げ御創りした、わたくしの『最高傑作』でございます。陽の元の加護によって存分に真価を発揮なさるはずの貴方が、ソラの〈光〉を次第に受け付けなくなっていったのは、ソラが天界へと飛び去って間もなくのこと……貴方の御身体は〈季節〉を追うにつれて、もはやこれまでのような機敏な動きも叶わず、国中を駆け抜けることすら叶わなくなって。貴方も貴方で、きっと、思うように身動きの取れなくなっていく御自身の御身体を疎ましく感じておられたのでしょう。ですから、『復活祭』の頃にフローランスが御造りした〔蜜酒〕を呑み、〔蜜酒〕によるわずかな快復力を〈陽光〉代わりに、何とか御自身の活動を維持しようとなさっていたのでしょう。

 貴方がそのように〔蜜酒〕へ頼り、何度も何度もフローランスの元へお通いになり、やがて入り浸るようになって間もなく加速するように〔蜜酒〕の摂取量を御増やしになりました。わたくしは、地下酒場へは出入りできませんから、フローランスに貴方の御様子を伺いながら、貴方がもはや、昼間の陽の元に出られなくなってしまったこと……つまりは、ソラの〔光〕をより拒絶なさって、フローランスの〔蜜酒〕を摂取し続けなくては御身体を保てなくなってしまわれたこと、とうとう乾かなくなった御身体は酔態を顕にし、貴方の爽朗な思考すら奪い、貴方自身の活動も間もなく維持できなくなるだろう事実を知り得ました。

 貴方の挙げ句の果て……これまでと計り知れないほどに精彩を欠く貴方の顛末に、わたくしは何の手助けも差し伸べられず、貴方の落魄(らくはく)のさまを見届けることしかできず……かつて寒冷離島で迎えた〈大極夜〉のように、やがて活動を止める貴方の行く末をおそるおそる待つことしかできなかったのです。

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