〈大極夜〉を超え、とうとう迎えたわたくしたちの輩——〈旧母星〉との別れ……間もなくかの光も絶え、〈災厄〉のいたずらも度が過ぎるようになり、次こそ犠牲者が出るのではと、わたくし、無い肝を冷やしたこともございました。
それでもなお、枯木と化した体躯と成り果てようとも逞しく誠実でしたフラジールが、今回の『復活祭』において最期の想いで手向けた〈災厄〉への労い……〈災厄〉との劇争に終止符を打つためにフラジールがソラへ託したという、フラジールが御自身の〈息根〉と引き換えに〈災厄〉の双子たちへお与えになった〔貌〕……フラジールの遺志。それは、見事に実を結び、この星が、借り物ではありますが知の有る生命を育む星となってからようやく手にする平穏、そして、ソラの齎す陽の下に〈災厄〉の双子を迎える微笑ましい手筈となりました。
然し乍ら、それらが今度は、貴方とソラの仲を裂く萌蘖となってしまうなんて。貴方がたは、ソラが地上へと赴ける手筈となってから常に共に御役目を成し、休暇すら御一緒に楽しむほどに仲の宜しい〔好敵手〕でしたのに。
フラジールの遺志をたずさえ、見事に大役を成したソラと、ソラの成した所業——ソラの手によって燃し、フラジールの御身体の灰となって舞い上がるさまをご覧になっていた貴方は……わたくしだって、貴方と同じ立場に居たなら、ソラの所業を即刻阻止致しましたし、それ以前に、まさかソラがそのような所業に出るなど、誰が思いついたことでしょう。
然し乍ら、わたくし、それ以上に思ってもみなかったのですよ。貴方がそれほどまでにフラジールをお慕いくださっていたなんて。
わたくし、貴方がフラジールにお会いするときは、いつにも増して好戦的で、フラジールもまた、他の方にはなさらないような揶揄い事を貴方だけにはなさっておいでで、わたくしには、それほどまで仲が宜しいようには見えていなかったのですよ? ですが、きっと貴方もフラジールも、国の皆様の拠り所でありましたから、立場が近いもの同士で惹かれ合うものがあったのでしょう。
だからこそ、ソラの所業がフラジールの遺志であったとしても、ソラの成した所業を受け容れられずに、貴方は大変長らく御悩みになって……御悩みなんて、昊天のように爽朗な貴方には無縁だったはずですのに、結局、ソラと貴方はすれ違いの末に『袂を分つ』軌道をお辿りになり、そして貴方は……ソラとは結局、和解を辿ることはなく……